体調はいまいち良くなく、目の下の隈がヒドイ。
でも、なぜだか、仕事の調子は陽当り良好。テンポよく石組みの階段を駆け下りていけるときみたいに、チャッチャと片付ける。

就業後、単身目をつけていたラーメン屋Rへ向かう。
ここは、「ラーメンと餃子」の(両方が)旨い店として知る人ぞ知る名店である。
帰り道でもなく、結構行きづらいところにあるので、なかなか行けずにいた。やっぱり近場で適当に済ませようか。寒いし。……でも、今日なら行けそうな気がする。今日を逃したら、僕らはいつまでも見知らぬ2人のまま♪かもしれない。そんな気がしていざ出発。
少し熱を帯びた額を押さえながら、会社から15分歩いてメトロのA駅へ。そこから数駅。B駅で下車。所持金が千円しかないことに気づきコンビニで諭吉一枚引き落とし再び歩く。僕の左側を猛スピードで通り過ぎる車と、僕の右側に鬱蒼と茂る森。突如現われる朽ち果てた門の跡。ここから先、人通りはほとんどない。ふと、今日が月曜であることが頭をよぎる。一瞬の不安を掻き消す。今思えば、その瞬間、ほとんど結末は予感されていたのだと思う。駅から15分。ようやく発見したラーメン屋Rは、誰がどう見たって「定休日」であった。
そのまま直進すること15分。「グラフィティ」だらけのトンネルを抜け、JRのC駅にたどり着く。そこから2駅。昔よく通ったD駅前の洋食屋、あそこならまだやっているかもしれない。チキンカツにたっぷりの大根おろしをかけて食べよう。瓶ビールの小瓶を頼んで。あそこはとにかく米が美味しく炊けてるんだよな。最後までのバランスに配慮しつつ、モリモリ食べよう。特製のサザンアイランドっぽいドレッシングがかけられた千切りキャベツを、隣の肉汁が徐々に侵食し、これが絶妙の味になってキャベツを一人前のおかずレベルの味に引き上げる。。。なんて想像も束の間。

ガーン。

ドアには「準備中」の木札。

中にはまだ客がたくさんいるというのに…。

わかった。
ターゲットを変えよう。
「もりもり食べる」のに相応しい男の料理といえばカレー。
近くに、「POT&POT」があったはずだ。
再び歩く…。おかしい。ない。お。吉野家。11日の牛丼一日限定発売、大々的に宣伝してるね。行きたいなあ、なんかバカみたいだけど、久々に食べたいなあ。。。それにしても、カレー屋がない。

――ははーん。ピーンと来た。知ってるよ、そのくらいオレだって……。
そのカレーチェーンが、吉野家D&Cグループだってことぐらいは知っていた。けど、いくら11日に一日限定で牛丼復活するからって、貴重なカレー屋を潰さなくたっていいじゃないか。牛丼屋なんて星の数ほどあるんだから。それに比べてカレーチェーンなんて数えるほどしかない。これだから、郵政民営化には反対なんだ。寒村には一体誰が配りにいくんだ、これから。

ふぅ。
この頃になると、僕はもう、何が何でも絶対にオトシマエつけてやる、という気分になっている。オトシマエの形が全然イメージ
できてないのだが、ここまできたら引き下がれない、という気持ちばかりがたぎる。

歩き続ける。
懐かしい店がある。
大学生の頃来たジャズ喫茶。
喋ると怒られるので、携帯のメールで会話をしたのが懐かしい。
お、この焼き鳥屋、あまり知られてないけど、結構旨いんだよな。。。
昔先輩に、夜中連れてこられて飲んだ中華料理屋だ。
このチェーン系定食屋で色々頼むってのも悪くないな。

でも、僕の気持ちはブレなかった。
あの店しかない。
1年ほど前に、サイクリングの途中に寄ったことがある。
たしかここからあと10分の距離。

あった。幸せの黄色い看板。

CoCo壱番屋。

うぉっしゃあ!!!

と、決して(食いしん坊だけど)大食漢ではない自分としては珍しく、「食って食って食いまくるぞー」というくらいの決意をして入店。一人でふてぶてしいまでに平然と4人がけのテーブルに腰をかける。久しぶりに来たココイチ。メニューがたくさんあって目移りする。初め、「コロッケカレー」を頼み、ほくほくのコロッケを一気に口のなかに放り込み、歯茎を火傷させながら食べるのも豪快で今の気分にピッタリ来るな、と思ったが、けっきょく、通常の「ロースカツカレーの1.5倍の肉を使用」と謳う、「とんかつカレー」に決定。ここはライスやカレーソース(ルー)の量を自由に選べるシステムだが、ここにきて「腹8分目が一番美味しく食べられるんだよね」と大人な計算が働き、一応栄養バランスを考え、ラッシー(のようなもの)とポテトサラダを注文。とんかつソースを豪快にかけ、ココイチの福神漬けは味気ないのでちょっとだけ入れ、ラッシー(のようなもの)で舌をクールダウンさせつつ、『週刊現代』の、堤義明の愛人独占告白手記をめくりながら食す。

久々の味でホッとする(母親のカレー的な)美味しさを感じるかな、という予想は裏切られた。なんというか、中途半端に本格的なのだ。スパイスの使い方とか。これはちょっと悲しかった。本格カレーなら、山ほど食べてきた(ちょっと大袈裟だが)。僕は、ようやく故郷へと戻った長い旅の終わりに、もっと普通のチェーンっぽい味を求めていたのに。スパイスなんて駆使しない、「リンゴとはちみつ、入れました」みたいな甘くて食べやすいもう少し素人っぽい味を。
※僕の知る限り、小田急線新宿駅構内にあるスタンドカレー屋は、かなりこのイメージに近い、イイ味を出しています。ここの、ゆで卵乗っけたカレーなんてパンチの無さが絶品で本当に旨い。

やれやれ。
僕は一体何をやっているんだろう。
猪瀬直樹『ミカドの肖像』も結局全然進んでない。
ぐったりだった。
歯茎の裏には、熱々のとんかつで火傷を負った。

最後までカタルシスを得ることができなかった。
今日は、わからないけれど、そういう日なのだ。

駅まで歩く気力は残っていなかった。

タクシー。
生れも育ちもこの界隈という地元民らしく、色々とうるさい。
やっかいだな。

適当にあいづち打っている間に我が家へ到着。

銭湯で漢方の湯に浸かり、ウイスキーを飲んで今に至る。

僕はときどき、こんな感じの(ミスチルの桜井言うところの?)「終わりなき旅」に出てしまうのだけど、これは本当に単なるバカのすることで時間の無駄以外の何物でもないんじゃないか、と
不安になったりしています。

本当にオチのない話を長々と、読んでいただいた方には失礼をいたしました。

追記:
角田光代『対岸の彼女』読了。
それなりには面白い。が、どうしても、「女の女による女のための小説」という気がしてしまう。それは別にいいのだけど、直木賞という、それなりに有名で一般性のある賞をとるにはずいぶん半分の(男性)読者を切り落としている気がした。エンターテインメントではなく、もっと思想とかそういうものに近い何か。他力本願、なのに戦闘的、言い換えれば閉じている小説。僕が鈍いだけかもしれないが(その可能性は経験的にかなり高い)、焦点が最後までボケている気がしてならなかった。

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